厚生労働省の「職場適応援助者の育成・確保に関する作業部会」において、障害者就労支援の新資格創設に向けた具体案が示されました。
・名称は、「障害者就労支援士」(仮称)。
・当初は総合的な知識、技能を検定する中級レベルの資格として、学科試験を行い、将来的に上級レベル、初級レベルの創設を検討する。
・今後、試験科目や範囲など詳細を詰め、2025年度以降にモデル問題の作成や検証をする。
・まず業界団体の民間資格として創設し、将来的に国家資格化も視野に入れる。
障害者就労支援士のイメージ
障害者雇用および就労支援に関する総合的な知識、技能をもつ者
(中級レベルの障害者就労支援人材)
障害者就労支援の実務経験3年以上の者
職場適応援助者養成研修を修了し、障害者就労支援に従事している者
【学科試験】
試験基準(試験科目及びその範囲並びにその細目)は、障害者就労支援分野の横断的な技 能・知識の習得を目的に科目を整理した基礎的研修のカリキュラム、シラバスを参考に作成を検討。
(試験科目のイメージ)
・ 就労支援の理念・目的、障害者雇用の現状と障害者雇用・福祉施策
・ 障害者雇用のプロセス(インテーク、職業準備性向上支援、求職活動支援、定着支援)
・ 就労支援機関の役割と連携
・ 障害特性と職業的課題(身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、高次脳機能障害、難病) ・ 労働関係法規の基礎知識
・ 企業に対する支援の基礎
・ ケースマネジメントと職場定着のための生活支援・家族支援
・ アセスメントの基礎 など
(出所)第14回職場適応援助者の育成・確保に関する作業部会資料(令和6年10月23日)
学科試験の詳細(案)
1 就労支援の理念・目的、障害者雇用の現状と障害者雇用・福祉施策
・就労支援の理念と目的
(1) 働くことの意義の理解
(2) 就労支援の理念と目的
(3) 支援者としての共通した目的
(4) 福祉的就労と一般就労
(5) 障害の捉え方 等
・就労支援の基本的な考え方
(1) 就労支援の視点
(2) 支援者の役割と資質
(3) 企業の視点の理解 等
・障害者雇用の現状
(1) 地域の障害者雇用の状況(障害者の雇用数、職業紹介状況等)
(2) 障害者の雇用の課題 等
・障害者雇用施策の概要
(1) 障害者雇用促進法の概要
(2) 雇用率制度
(3) 障害者差別禁止(虐待防止含む)、合理的配慮 等
・障害者福祉施策の体系や概要
(1) 障害者総合支援法の概要
(2) 障害福祉サービスの体系
(3) 就労系障害福祉サービスの概要 等
・雇用施策と福祉施策との連携
福祉・教育・医療から雇用への障害者の流れ等について一般的な知識を有すること
2 就労支援のプロセス(インテーク~職業 準備性の向上のための支援)
・支援に当たっての基本的姿勢
支援に当たっての基本的姿勢に関し、一般的な知識を有すること
・就労支援全体のプロセス
就労支援全体の各プロセスにおける実施内容・方法等について一般的な知識を有すること
・就労に関する方向付けのための支援
(1) インテーク、アセスメント、プランニング
(2) アセスメントから一般就労への移行の過程
・職業準備性の考え方
(1) 職業準備性の内容
(2) 職業準備性を考える際の留意点 等
・職業準備性の向上のための支援
(1) 職業準備性の向上を図るための方法とポイント
(2) 職業準備性の向上のためのプログラム 等
3 求職支援のプロセス(求職活動支援~定着支援)
・就職のための支援
(1) ハローワーク等の活用
(2) 受入れ企業の選定・開拓
(3) 企業へのアプローチ
(4) 就職時の支援 等
・職場定着のための支援
(1) 職場適応と職場定着
(2) 職場復帰
(3) 障害者・企業双方への支援
(4) 福祉施策等の活用や連携
(5) 支援の実施方法 等
・加齢等に伴う諸問題の対応
障害者と企業双方の立場や状況に応じた調整の必要性等について一般的な知識を有すること
4 就労支援機関の役割と連携
・就労支援機関の役割と業務内容
(1) ハローワーク
(2) 地域障害者職業センター
(3) 障害者就業・生活支援センター
(4) 障害者職業能力開発機関
(5) 就労系障害福祉サービス
(6) 就労支援に関する機関(医療機関、教育機関、相談支援事業所、発達障害者支援センター、難病相談センター、高次脳機能障害の支援拠点機関、その他各障害に応じた専門機関 等)
・就労支援ネットワーク
(1) ネットワークの重要性
(2) ネット―ワークの構築・維持のためのポイント
(3) ネット―ワークを活用した支援事例 等
5 障害特性と職業的課題
・身体障害
(1) 身体障害の概要(障害の種類、態様、原因、障害者手帳との関係等)
(2) 身体障害の職業的課題
(3) 障害特性に即した支援方法、支援上の留意事項
(4) 合理的配慮の事例
・難病
(1) 難病の概要(障害の種類・症状、原因、障害者手帳との関係等)
(2) 難病の職業的課題
(3) 疾患特性に即した支援方法、支援上の留意事項
(4) 合理的配慮の事例
・知的障害
(1) 知的障害の概要(態様、原因、障害者手帳との関係等)
(2) 知的障害の職業的課題
(3) 障害特性に即した支援方法、支援上の留意事項
(4) 合理的配慮の事例
・発達障害
(1) 発達障害の概要(様態、原因、障害者手帳との関係等)
(2) 発達障害の職業的課題
(3) 疾患特性に即した支援方法、支援上の留意事項
(4) 合理的配慮の事例
・精神障害
(1) 精神障害の概要(疾患の種類・症状、原因、障害者手帳との関係等)
(2) 精神障害の職業的課題
(3) 障害特性に即した支援方法、支援上の留意事項
(4) 合理的配慮の事例
・高次機能障害
高次脳機能障害障害に関し、次に掲げる事項について一般的な知識を有すること
(1) 高次脳機能障害の概要(様態、原因、障害者手帳との関係等)
(2) 高次脳機能障害の職業的課題
(3) 障害特性に即した支援方法、支援上の留意事項
(4) 合理的配慮の事例
6 労働関係法規の基礎知識
・労働契約上の注意点
(1) 労働契約の締結
(2) 労働時間、休憩、休日、休暇
(3) 賃金
(4) 退職、解雇
(5) 就業規則 等
・安全管理
(1) 安全配慮義務
(2) 健康管理 等
・法律上加入が義務づけられている労働保険・社会保険
(1) 労働保険(労働者災害補償保険(労災保険)、雇用保険)
(2) 社会保険(公的医療保険、年金保険)
(3) 障害年金(障害基礎年金、障害厚生年金) 等
・問題が生じた場合の相談
問題が生じた場合の相談先に関し、相談先一覧について一般的な知識を有すること
7 企業に対する支援の基礎
・企業で働くとは
企業の行動原理等について一般的な知識を有すること
・企業を支援することの重要性
企業の企業の主体的な取組の促進等について一般的な知識を有すること
・障害者雇用を巡る企業を取り巻く状況(近年の動向)
(1) 障害者雇用施策の動向に応じた対応
(2) 行政指導の実施
(3) CSRに関する取組 等
・企業支援のプロセス及び支援方法
(1) 支援ニーズの把握
(2) 事業所情報の把握(属性情報、障害者雇用に対する考え方、職場環境 等)
(3) 支援ニーズに応じた支援方法の検討、支援の実施(支援内容、助成金等)
(4) フォローアップ 等
・企業支援の留意点
企業支援の留意点に関し、次に掲げる事項について一般的な知識を有すること
(1) 企業との信頼関係の構築
(2) 企業担当者のメンタルヘルスに関する支援 等
8 ケースマネジメントと職場定着のための生活支援・家族支援
・就労支援におけるケースマネジメントの重要性
(1) ライフステージや生活の変化に対応した支援の必要性
(2) 就労支援におけるケースマネジメント 等
・生活支援・家族支援の進め方
(1) 職業生活を維持するための生活支援・家族支援
(2) 生活支援・家族支援のニーズと対応例 等
・生活支援、家族支援における企業と支援機関の役割分担と連携
企業と支援機関が連携して行う支援の内容と役割分担等について一般的 な知識を有すること
9 アセスメントの基礎
・アセスメントの目的と心構え
(1) アセスメントの目的
(2) 「個人」と「環境」の2つの視点
(3) 障害者本人と支援者の協同作業(自己決定、自己理解促進)等
・アセスメントの実施方法と留意事項
(1) アセスメントの方法(面接・調査、検査、職場実習、行動 観察等)
(2) アセスメントの視点(具体的な観察ポイント)
(3) アセスメントに活用できるツール(就労支援のためのアセスメントシート等)等
・アセスメント結果の分析ポイントと活用の仕方
(1) アセスメント結果の総合的な分析
(2) ストレングスの視点
(3) 環境(事業所)との相互作用の視点 等
・相談を行う上での技法
(1) 相談を行う上での基本的態度
(2) 相談技法(傾聴、受容、共感 等)
10 企業における障害者雇用の実際
・障害者雇用の考え方や雇用管理の実際
(1) 障害者雇用の考え方や雇用管理の実際
(2) 障害者雇用の考え方
(3) 障害のある従業員の担当業務
(4) 雇用管理に関する取組(障害のある従業員との関わり方、職場内支援体制、合理的配慮の内容、現在の課題点等)等
・企業が求める人材
(1) 採用時に重視していること
(2) 雇用継続において重視していること 等
・支援者に求めること
(1) 採用時に支援者に求めること
(2) 採用後の雇用の段階に応じて支援者に求めること