放課後デイ 5領域とは?【具体例】と対応

令和6年度の報酬改定により、児童発達支援施設・放課後等デイサービスは5領域全て網羅した療育を行わなければなりません。このため、事業者は、5領域の観点から運営方針や療育内容の見直しを行い、支援プログラムの作成・公表、個別支援計画の作成を行う必要があります。

【令和6年4月以降】

5領域全てを含めた支援の提供
5領域を踏まえた個別支援計画書の作成具体的な作成・記載ポイントは→こちら
5領域とのつながりを明確にした支援プログラムの作成・公表の義務化
→令和6年度中に公表かつ届出が必要(届出内容の詳細は→こちら)
 →届出をしていない場合、利用者全員分が15%減算(令和7年4月以降)

では、放課後デイの5領域とは?
「①健康・生活」「②運動・感覚」「③認知・行動」「④言語・コミュニケーション」「⑤人間関係・社会性」になります。この5領域については従前から児童発達支援ガイドラインには詳しく記載されておりましたが、一方で放課後等デイサービスガイドラインには詳しい記載がありませんでした(R6年度中改定予定)。なお、保育の5領域も有名ですが、「健康」・「環境」・「表現」・「言葉」・「人間関係」ですので一部異なります。

【5領域の対応】

・5領域に基づいたアセスメントを行い、5領域を網羅した計画を作成した上で支援を行う。
・アセスメントや計画作成の際は、5領域の視点から、子どもと家族の状況を多角的かつ総合的に分析して、そのニーズや課題を把握することが肝要であり、単に5領域に対応する課題や支援を当てはめるだけのアセスメントや計画作成にならないようにする。

以下は、5領域に分けて具体例を示していますが、本来、5領域はそれぞれが独立しているものではなく、相互に関連して重なりあっている点にご留意ください。また、5領域を網羅した支援をする際には、「自立支援と日常生活の充実のための活動」・「体験的な活動や遊び」・「地域交流の機会の提供」・「こどもが主体的参画できる機会の提供」の4つの基本活動を複数組み合わせて支援を行うことが求められています。

【5領域の具体例】

①健康・生活
・定期的な心身の把握(毎回体温測定・気分把握)
・生活リズムの安定(定期的かつ定時に通所)
・構造化を意識した部屋のレイアウト・掲示・支援
(視覚的に「何がどこにあるか」「どこで何をするか」を絵などを使い具体的に表示)
・SSTなどによる身体的、精神的、社会的訓練
・衣服の着脱(外遊びや水遊び等の活動の前に重点的に取り組む)
・衣服の着脱(服を頭上に掲げる程度の行動を促す)
・身だしなみや整え方

②運動・感覚
・姿勢保持や上肢・下肢の運動・動作の改善
・視覚、聴覚、触覚、嗅覚、固有覚、前庭覚などの感覚活動
・つかむ・支える・滑る等の要素を取り入れた遊具遊びの提供
・ストレッチ、ラジオ体操、軽い運動
・バランスボールでの姿勢保持
・指先トレーニング
・ビジョントレーニング
・音楽に合わせて体を動かす遊びや運動

③認知・行動
・物の機能や属性、形、色、音が変化する様子の把握
・空間・時間等の概念の把握
・天気、気温、日付の把握と確認による感覚・数の認知形成
・1日の時間帯別活動を示すタイムテーブルの確認による時間の認知形成
・粘土、スライムによる物質の変化と感覚の認知形成
・ブロック遊びによる空間把握の認知形成
・小集団でのゲームでの適切な行動形成、認知の偏りの配慮
・ABAなどにより感覚、認知の偏りに対するリフレーミング
・季節の変化への興味などの感性形成のための外出・行動

④言語・コミュニケーション
・文字・記号、絵カード、機器等の適切なコミュニケーション手段を選択・活用
・はじまりの会で今日の気分・気持ちをプレゼンテーションして言語表出・受容
・終わりの会で活動振り返りと気持ちをプレゼンテーションして言語表出・受容
・個別または小集団での障害の特性に応じた読み書き
・自己紹介、他己紹介
・ルールなどを絵や絵カードを使って視覚化
・PECSなどコミュニケーションのスキル向上訓練
・手話、点字、音声、文字、触覚、平易な表現等による多様なコミュニケーション

⑤人間関係・社会性
・アタッチメント形成(個別面談で自尊心を高める・認める)
・活動前に全体を指差しする等を行い、全体を見渡す機会の設定
・見本になるこどもの近くに誘う等の関わり・促し
・見立て遊び、つもり遊び、ごっこ遊びの組み合わせ
・一人遊び、並行遊び、連合的な遊びの組み合わせ
・役割分担のある遊びなどの協同遊び
・ルールの理解が必要な遊びや集団活動
・地域施設などへの社会見学
・イベントなどを通した地域との交流

なお、支援プログラムについては、事業所が提供する発達支援における基本的考え方や支援の内容、関係機関連携や家族支援、インクルージョンの取組等の事業所の支援の全体像と方針について整理して記載すること、事業所の従業者の意見も聞いて作成することが求められています。

以下は、児童発達支援のガイドラインで示されているものになります。放課後等デイのガイドラインには具体的には示されておりませんので、以下を参考にして個別支援計画や支援プログラムに反映させてみてください。

①健康・生活

a ねらい

(a)健康状態の維持・改善

(b)生活のリズムや生活習慣の形成

(c)基本的生活スキルの獲得

b 支援内容

(a)健康状態の把握
健康な心と体を育て自ら健康で安全な生活を作り出すこと を支援する。また、健康状態の常なるチェックと必要な対応 を行う。その際、意思表示が困難である子どもの障害の特性 及び発達の過程・特性等に配慮し、小さなサインから心身の異変に気づけるよう、きめ細かな観察を行う。

(b)健康の増進
睡眠、食事、排泄等の基本的な生活のリズムを身に付けられるよう支援する。また、健康な生活の基本となる食を営む力の育成に努めるとともに、楽しく食事ができるよう、口腔内機能・感覚等に配慮しながら、咀嚼・嚥下、姿勢保持、自助具等に関する支援を行う。さらに、病気の予防や安全への配慮を行う。

(c)リハビリテーションの実施
日常生活や社会生活を営めるよう、それぞれの子どもに適した身体的、精神的、社会的訓練を行う。

(d)基本的生活スキルの獲得
身の回りを清潔にし、食事、衣類の着脱、排泄等の生活に必要な基本的技能を獲得できるよう支援する。

(e)構造化等により生活環境を整える
生活の中で、さまざまな遊びを通して学習できるよう環境を整える。 また、障害の特性に配慮し、時間や空間を本人に分かりやすく構造化する。

②運動・感覚

a ねらい

(a)姿勢と運動・動作の向上

(b)姿勢と運動・動作の補助的手段の活用

(c)保有する感覚の総合的な活用

b 支援内容

(a)姿勢と運動・動作の基本的技能の向上

日常生活に必要な動作の基本となる姿勢保持や上肢・下肢 の運動・動作の改善及び習得、関節の拘縮や変形の予防、筋力の維持・強化を図る。

(b)姿勢保持と運動・動作の補助的手段の活用 姿勢の保持や各種の運動・動作が困難な場合、姿勢保持装置など、様々な補助用具等の補助的手段を活用してこれらができるよう支援する。

(c)身体の移動能力の向上

自力での身体移動や歩行、歩行器や車いすによる移動など、日常生活に必要な移動能力の向上のための支援を行う。

(d)保有する感覚の活用

保有する視覚、聴覚、触覚等の感覚を十分に活用できるよう、遊び等を通して支援する。

(e)感覚の補助及び代行手段の活用

保有する感覚器官を用いて状況を把握しやすくするよう眼鏡や補聴器等の各種の補助機器を活用できるよう支援する。

(f)感覚の特性(感覚の過敏や鈍麻)への対応

感覚や認知の特性(感覚の過敏や鈍麻)を踏まえ、感覚の偏りに対する環境調整等の支援を行う。

③認知・行動

a ねらい

(a)認知の発達と行動の習得

(b)空間・時間、数等の概念形成の習得

(c)対象や外部環境の適切な認知と適切な行動の習得

b 支援内容

(a)感覚や認知の活用
視覚、聴覚、触覚等の感覚を十分活用して、必要な情報を収集して認知機能の発達を促す支援を行う。

(b)知覚から行動への認知過程の発達
環境から情報を取得し、そこから必要なメッセージを選択し、行動につなげるという一連の認知過程の発達を支援する。

(c)認知や行動の手掛かりとなる概念の形成物の機能や属性、形、色、音が変化する様子、空間・時間 等の概念の形成を図ることによって、それを認知や行動の手掛かりとして活用できるよう支援する。

(d)数量、大小、色等の習得 数量、形の大きさ、重さ、色の違い等の習得のための支援を行う。

(e)認知の偏りへの対応
認知の特性を踏まえ、自分に入ってくる情報を適切に処理できるよう支援し、認知の偏り等の個々の特性に配慮する。また、こだわりや偏食等に対する支援を行う。

(f)行動障害への予防及び対応
感覚や認知の偏り、コミュニケーションの困難性から生ずる行動障害の予防、及び適切行動への対応の支援を行う。

④言語・コミュニケーション

a ねらい

(a)言語の形成と活用

(b)言語の受容及び表出

(c)コミュニケーションの基礎的能力の向上

(d)コミュニケーション手段の選択と活用

b 支援内容

(a)言語の形成と活用

具体的な事物や体験と言葉の意味を結びつける等により、 体系的な言語の習得、自発的な発声を促す支援を行う。

(b)受容言語と表出言語の支援

話し言葉や各種の文字・記号等を用いて、相手の意図を理解したり、自分の考えを伝えたりするなど、言語を受容し表出する支援を行う。

(c)人との相互作用によるコミュニケーション能力の獲得

個々に配慮された場面における人との相互作用を通して、 共同注意の獲得等を含めたコミュニケーション能力の向上のための支援を行う。

(d)指差し、身振り、サイン等の活用

指差し、身振り、サイン等を用いて、環境の理解と意思の伝達ができるよう支援する。

(e)読み書き能力の向上のための支援

発達障害の子どもなど、障害の特性に応じた読み書き能力の向上のための支援を行う。

(f)コミュニケーション機器の活用

各種の文字・記号、絵カード、機器等のコミュニケーション手段を適切に選択、活用し、環境の理解と意思の伝達が円滑にできるよう支援する。

(g)手話、点字、音声、文字等のコミュニケーション手段の活用

手話、点字、音声、文字、触覚、平易な表現等による多様 なコミュニケーション手段を活用し、環境の理解と意思の伝 達ができるよう支援する。

⑤人間関係・社会性

a ねらい

(a)他者との関わり(人間関係)の形成

(b)自己の理解と行動の調整

(c)仲間づくりと集団への参加

b 支援内容

(a)アタッチメント(愛着行動)の形成

人との関係を意識し、身近な人と親密な関係を築き、その信頼関係を基盤として、周囲の人と安定した関係を形成するための支援を行う。

(b)模倣行動の支援

遊び等を通じて人の動きを模倣することにより、社会性や対人関係の芽生えを支援する。

(c)感覚運動遊びから象徴遊びへの支援

感覚機能を使った遊びや運動機能を働かせる遊びから、見立て遊びやつもり遊び、ごっこ遊び等の象徴遊びを通して、徐々に社会性の発達を支援する。

(d)一人遊びから協同遊びへの支援

周囲に子どもがいても無関心である一人遊びの状態から並行遊びを行い、大人が介入して行う連合的な遊び、役割分担したりルールを守って遊ぶ協同遊びを通して、徐々に社会性の発達を支援する。

(e)自己の理解とコントロールのための支援

大人を介在して自分のできること、できないことなど、自分の行動の特徴を理解するとともに、気持ちや情動の調整ができるように支援する。

(f)集団への参加への支援

集団に参加するための手順やルールを理解し、遊びや集団活動に参加できるよう支援する。

(ご参考)個別支援計画書作成ポイント

詳細は→こちら

(ご参考)放課後デイサービスガイドラインの改定概要

最後に、令和6年度に放課後等デイサービスガイドラインが大幅改定されましたので、概要をご紹介いたします。本人支援において5領域の視点を網羅したオーダーメイドの支援が行われることが明記されています。なお、放課後等デイサービスガイドラインでは、5領域について具体的には記載されていません。

・運営面・体制面を中心 に示していたガイドラインについて、支援の具体的な内容や支援を提供する上での視点等についてより充実化を図る改訂が行われました。

【全体像】

○各事業所は、本ガイドラインの内容を踏まえつつ、各事業所の実情や個々の子どもの状況に応じて不断に創意工夫を図り、提供する支援の質の向上に努めなければならない。
○インクルージョンを推進するとともに、こどもの意見表明の機会の確保や、年齢や発達の程度に応じたこどもの意見の尊重、こどもの最善の利益の保障を考慮し、支援を行うことが重要。
〇 放課後等デイサービスは、単にこどもが知識やスキルを身につけることが目的ではなく、様々な遊びや体験活動の機会を通じて生きる力を育むことが目的
支援を「発達支援(本人支援・移行支援)」「家族支援」「地域支援」に大別。
〇 放課後等デイサービスの提供に当たっては、障害特性だけでなく、児童期・思春期の発達の特徴等を理解する必要。

【具体的内容】

①本人支援
障害のあるこどもの発達の側面から、「健康・生活」「運動・感覚」「認知・行動」「言語・コミュニケーション」「人間関係・社会性」の5領域において、将来、日常生活や社会生活を円滑に営めるようにすること。包括的かつ丁寧にこどもの発達段階や特性に応じた支援の提供が重要であり、全てのこどもに5領域の視点を網羅したオーダーメイドの支援が行われることが重要である。


②移行支援
障害の有無にかかわらず、全てのこどもが共に成長できるよう、同年代のこどもとの仲間づくりを図るとともに、学校等との連携を図りながら就学・進学時における支援の連続性の確保や学校卒業後の生活に向けた成人期への移行を意識した取組を行うこと。


③家族支援
年齢とともに変化する発達課題や思春期の課題等を乗り越えるため、きょうだいを含めた家族の困り感に寄り添いながら丁寧に関わること。


④地域支援
個別支援計画と教育支援計画を連携させるなど学校と連携することや、地域の中のこどもの居場所づくりという観点を持ちながら、地域の社会資源を積極的に活用し、遊びや体験、交流の場を広げること。

【支援の方法】
以下のの4つの基本活動を複数組み合わせて行うことが基本
・「自立支援と日常生活の充実のための活動」
・「体験的な活動や遊び」
・「地域交流の機会の提供」
・「こどもが主体的に参画できる機会の提供」