令和7年12月16日、厚生労働省は「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」において、令和8年6月より児発・放課後デイの新規事業所の基本報酬を引き下げる案を提示しました。3年に1度の定例的な報酬改定ではなく、来年度に臨時報酬改定を行う異例の事態です。
あくまでも案であり確定ではありませんが、児発・放課後デイ事業者の経営への影響度が大きいため、記事にしました。
※なお、既存事業所については、令和8年度は従前どおりの報酬体系であり影響はないですが、臨時改定をしてまで報酬引き下げをしたことは、令和9年度の定例の報酬改定の方向性に大きく影響がありそうなことが窺えるのではないでしょうか。
報酬引き下げ(案)
○ 障害福祉サービス等に係る予算額が、障害者自立支援法の施行時から4倍以上に増加し、特に令和6年度報酬改定後において総費用額が+12.1%の伸び(一人あたり総費用額:+6.0%、利用者数:+5.8%)となっている。また、こうした中で、引き続き人材確保が課題となっているとともに、本来の制度趣旨に沿わないで加算を算定する事業者も散見されるなど、サービスの質の低下も懸念される状況。
○ このため、喫緊の課題である従事者の処遇改善に加えて、利用者に提供されるサービスの質を確保しつつ、制度の持続可能性を確保する観点から、令和8年度に臨時応急的な見直しを実施する。
【報酬引き下げ案】
■ 新規事業所に限り、令和8年度について一定程度引き下げた基本報酬を適用する。
■収支差率が高く、かつ、事業所が急増しているサービス類型(※)
・就労継続支援B型
・共同生活援助
・児童発達支援、放課後等デイサービス
(※)年間総費用額全体に占める割合が1%以上かつ収支差率が5%以上あるサービスのうち、
事業所の伸び率が過去3年間5%以上の伸びを続けているサービス
■ 令和8年6月施行を想定
障害福祉業務の現状認識と課題
○ 障害福祉サービス等に係る総費用が増加し、また、人材確保が喫緊かつ重要な課題となっている中、一部のサービスについては、一定の収支差率を確保しつつ、事業所数や利用者数の伸びが継続している状況。
○ 一方、自治体(指定権者)へのアンケートでは、事業所数の伸びが著しいサービスについて、「事業者側はニーズ調査をせずにどんどん参入してきており、先行して開設した後に利用者を募るという状況がみられる」といった声があるなど、近年の事業所数の急増は、必ずしもニーズを反映したものではない可能性がある。


(出所)厚生労働省「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」第56回資料
○ 障害福祉サービス等に係る予算額については、障害者自立支援法の施行時から4倍以上に増加し、特に令和6年度報酬改定後において総費用額が+12.1%の伸び(一人あたり総費用額:+6.0%、利用者数:+5.8%)となっている。
○ このように障害福祉サービス等に係る総費用が増加し、また、人材確保が喫緊かつ重要な課題となっているなか、一部のサービスについては、一定の収支差率を確保しつつ、事業所数や利用者数の伸びが継続している状況。
○ 令和6年度報酬改定後の状況については、例えば、就労継続支援B型については、高い報酬区分の事業所の割合が増加(低い報酬区分の事業所の割合が減少)し、平均工賃月額も約6千円の上昇となっている。これは令和6年度報酬改定における平均工賃月額の計算方法の変更の影響(障害特性等により、利用日数が少ない方を多く受け入れる場合があることを踏まえた見直し。平均工賃月額の区分における分布に大きな変動はないものと想定)が考えられる。
○ また、新規参入も増加し続けている中、サービスの質の確保を図ることが重要。最近では、障害福祉サービス事業者における不適切な事案の報道等もあり、例えば、就労移行支援体制加算について、本来の趣旨と異なる形で過大に受給されている事業者の報道もある。
(ご参考)就労移行支援・就労Bの臨時報酬改定案
1.就労移行支援体制加算の見直し
就労移行支援体制加算について、同一の利用者についてA型事業所と一般企業の間で複数回離転職を繰り返し、その都度加算を取得するという、本来の制度趣旨に沿わない形で算定する事業者の報道があること等を踏まえ、一事業所で算定対象となる就職者数に上限(定員数までを原則)を設定するなど、適正化を行う。
○ 就労移行支援体制加算について、一事業所で算定可能となる就職者数に上限(定員数までを原則)を設定する。
○ また、同一事業所だけではなく、他の事業所において過去3年間で算定実績がある利用者について、都道府県知事又は市町村長が適当と認める者を除き、算定不可であることを明確化する。
※対象サービス:就労継続支援A型、就労継続支援B型、生活介護、自立訓練(機能訓練・生活訓練)
○ 令和8年4月施行を想定
2.就労継続支援B型の基本報酬区分の基準の見直し
就労継続支援B型について、平均工賃月額の算定方式の見直しにより、見直しの意図と異なる形で高い報酬区分の事業者が増えたことに対応し、基本報酬区分の基準の見直しを行う。その際、事業運営に大きな影響を生じないよう、一定の配慮を行う。
○ 平均工賃月額の算定方式の見直しにより、見直しの意図と異なる形で高い報酬区分の事業者が増えたことに対応し、基本報酬区分の基準の見直しを行う。
・平均工賃月額が約6千円上昇していることを踏まえ、その一定割合分(例:上昇幅の1/2)、基準額を引き上げる。
・その際、令和6年度改定前後で区分が上がっていない事業所については、見直しの適用対象外。
・見直しにより区分が下がる事業所も、その影響が一定の範囲内に収まるよう配慮する。
・令和6年度改定で単価を引き下げた区分7と8の間の基準については引き上げず、据え置く。
○ 令和8年6月施行を想定