障害福祉事業を開業・開設するための第一歩は、法人を設立して法人格を持つことです。
まず経営者が意思決定すべきことは、どの法人格を選択するのか?です。
放課後等デイサービス・児童発達支援施設の事業者は、どの法人格でも選択することができ、実際に色々な法人格で経営しております。法人格ごとのメリット・デメリットの前に、実際にどのような法人格なのか調べてみました。
北海道内の放デイ・児発等の障害福祉事業者は約1,000社あり、法人格を調べてみました。
北海道 障害福祉事業 法人格 ベスト5
1位 株式会社 約400社(約4割)
2位 合同会社 約200社(約2割)
3位 NPO法人・社会福祉法人 約130社(約1割強)
5位 一般社団法人 約80社(約1割弱)
あとは有限会社、医療法人、財団法人などもあります
思っていた通りでしたか?
一概には言えませんが、資金面の心配があまりないなら「①株式会社」を選択するのが、社会的な信用度も含めてベターかと思います。
もちろん、「②合同会社、③NPO法人、④一般社団法人」も選択肢の一つです。ちなみに、社会福祉法人は1億の資産が必要となりますので、説明は割愛いたします。
では、それぞれの法人格のメリット・デメリットを見ていきましょう。
①株式会社
- ○社会的信用度が高い
- 放デイの利用者など、利害関係社からの一定の信用が得られる
- ○資金調達がしやすい
- 銀行からの融資・出資・補助金・助成金など自らの資金以外の外部資金調達がしやすい
- ×コストが高い(費用がかかる)
- 開設時のイニシャルコスト(法人登記費用)、運営時のランニングコストは法人住民税、決算公告費用など)
②合同会社
- ○コストが低い(低予算で設立・運営が可能)
- 開設時のイニシャルコスト(登記費用)、運営時のランニングコストが低い
- ×混乱原因となりやすい(定款に自社ルールを盛りこめば回避できるので定款作成時に要注意!)
- 合同会社の原則として、例えば、放デイを合同会社2人の「社員(出資者兼役員)」で立ち上げた場合、2名ともに業務上の意思決定権があるため、「施設の場所をどこにするか」「サービス提供時間をどのようにするのか」「車の送迎をするのか」などの意思決定に過半数の同意が必要となる。また「定款の内容変更」や「社員の追加」は、全社員の同意が必要が原則となる。
- ×事業承継、権利譲渡がしにくい
- 例えば、引退して子供や知り合いに放デイを継がせようとするとき(権利譲渡)、他の社員全員の同意が必要となるため、他の社員が一人でも反対すれば権利譲渡できない。
- 死亡したときも、株式会社の場合は相続人が相続することで事業承継できるが、合同会社の場合は死亡すると退職扱いとなる。例えば、放デイを自分ひとりで合同会社として立ち上げ、突然亡くなると自動的に解散となる。→定款作成時に定款に「社員が死亡した場合は当該社員の相続人がその持分を承継できる」という内容を追加する文言を盛り込む必要がある。
③NPO法人
- ○コストが低い(低予算で設立・運営が可能)
- 開設時のコストは殆どかからない。NPO法人は登録免許税法の対象外であり、最低資本金規制もないため、資金や財産がなくても申請は可能です。必要な費用は法人印鑑、住民票などの費用程度。運営時のランニングコストも決算公告が不要のため低コスト。
- ×設立までに長期間(約4ヶ月)かつ社員10人以上必要
- 開設したい放デイの所轄庁(例 札幌市)へ設立認証の申請、縦覧(1ヶ月間公開)、審査・認証(2ヶ月間)、法人設立登記手続き(2週間以内)と約4ヶ月もかかる。
- 総会の議決権を持つ社員が10人以上、理事3人以上・監事1人以上必要。
- ×事務手続きが多い
- 事業年度ごとに、放デイの事業報告書、収支計算書、社員名簿を所轄庁に提出しなければならず、これらは内閣府NPOホームページで公開される。インターネットで誰でも簡単に無料で、役員報酬、財産などの事業収支、財産目録などを調べることができる。
- 定款の変更に関する手続きは複雑かつ厳格で審査時間がかかる。申請前に社員総会の議決が必要な他、事業計画書や活動予算書の提出が必要となる。
- × 経営の自由度が極めて低い
- 10人以上の社員での意思決定となるため、合同会社よりも更に経営上の混乱原因となりやすく、また事業承継、権利譲渡がしにくくなる。公益のため、事業活動で出た利益を社員に還元することができない。など
④一般社団法人
- ○設立しやすい(低コストかつ短期間)
- NPO法人と異なり、2人以上で設立可能。法務局への登記のみで約1週間程度。
- NPO法人と異なり、事業の制限がかからない。
- △公益性が高いというイメージが残っている
- 公益制度変更前の社団法人は、公益性の高い企業が認められていため、そのイメージの名残がある。しかしながら、昨今このイメージを利用した悪徳団体も出てきているため不明。
- ×(非営利型)会計・事務処理が複雑
- 非営利型か営利型によって会計処理の方法が異なり、株式会社と処理方法が異なるため、独自の会計処理の知識が必要となる。また、収益事業とそれ以外の事業で会計処理を分けて行う必要があるため、経理・事務処理が煩雑となる。
- 定款の変更に関する手続きは複雑かつ厳格で審査時間がかかる。申請前に社員総会の議決が必要な他、事業計画書や活動予算書の提出が必要となる。
- ×(非営利型)事業の利益を分配できない
- 非営利型の場合、定款の定めをしても、事業活動で出た利益を社員に還元することはできない。非営利型であると、融資などの資金調達が受けにくくなる。一方、営利型だと、事業で得られたすべての利益が課税されてしまうため、税制面からは株式会社と比べて特段のメリットがない。
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