放課後デイ、就労支援施設等の障害福祉業務においては、指定権者(自治体)の判断により、総量規制(新規開設制限・出店制限)が行われております。例えば、札幌市では令和7年4月より、児童発達支援・放課後等デイに限定して総量規制が導入されました。
以下の記事では、総量規制について、具体例も含めて詳しく解説いたします。
1. 総量規制とは
総量規制とは、障害福祉サービスの提供量を行政が制限する制度です。総量規制は、特定の地域やサービス種別について、事業所の新規参入やサービスの拡大を制限することで、地域におけるサービスの質の向上と、計画的なサービス提供(事業所の新規参入やサービスの拡大を制限することで、過剰な供給を防ぐ)目的で導入されています。
2. 総量規制の導入背景
- サービスの質の確保
事業所の数が過剰になると、サービスの質が低下する可能性があります。総量規制は、事業者の数を制限することで、質の高いサービスを提供できるよう環境を整えることを目的としています。 - 地域ごとの需給バランスの偏りを減らす
都市部と地方部など地域により、障害福祉サービスの需要と供給に大きな差が見られます。総量規制は、地域ごとの需給バランスを調整し、サービスが不足している地域への支援を強化することを目的としています。 - 財政負担の増大
障害福祉サービスは、利用者の増加やサービス内容の高度化に伴い、財政負担が急速に増加しています。総量規制は、この財政負担の増大を抑制し、持続可能な福祉サービスの提供を目的としています。
3. 総量規制の具体的な仕組み
1 新規開設制限
- 指定申請前の事前選定制度
新規事業所の開設に、自治体による事前選定を受けて、選定された事業者のみ指定申請が可能となります。 - 新規受付停止
既に十分な事業所が存在する自治体では、選定制度もなく、新規開設を一切させてもらえない地域もあります。
2 特定サービス種別の上限設定
放課後等デイサービスや生活介護など、需要が特に高いサービス種別に対して、上限数を設定することが多いです。
4. 総量規制の具体例(札幌市)
総量規制が導入された札幌市の令和7年度の指定申請(事前選定制度)の流れと選定基準になります。
①事前選考応募:令和7年4月下旬~6月30日
・事前選考の書類を揃えて申請
・有識者等で構成する委員会での協議を経て、選考基準をスコア化
・スコアが選定基準を満たす事業者が選定(指定の申請を1年間内にできる権利)。
②選考結果:令和7年7月下旬
③指定申請:選考された事業者のみ、1年以内に申請
令和7年8月1日〜令和8年7月31日
④指定 :令和7年10月1日から令和8年9月30日まで
【選考基準①設備・人員】
・事業所の所在
開所予定地の小学校区内における児童数に対しての事業所数
・事業所の設備
発達支援室の面積(児童1人当たりの面積)
独立した事務室、相談室の設置
支援に必要な機器、部屋の設置
・人員配置
人員基準を上回る職員配置
従業者のうち、常勤及び専従の人数
管理者の業務経験年数
従業者の業務経験年数
専門職の配置
・事業の継続性
安定した障害児通所支援の運営実績
適正な収支見通し
・職員研修、待遇等
職員の資質向上のための取組
職場環境の向上のための取組
・運営方針
障害児相談支援事業者、他事業所、関係機関との連携
地域ニーズの把握、地域との交流・連携
【選考基準②】発達支援の内容等
・意思決定支援(意思決定に係る能力、特性、背景)
・アセスメント(発達の理解や意識、標準化された指標)
・社会モデルの視点(児童・保護者のストレングス)
・支援方針(目標設定、インクルージョンの観点)
・策定プロセスと具体性(支援内容、ニーズ、特徴)
・5領域(個別支援計画、プログラム)
・家族支援、移行支援、地域支援・地域連携
5. 総量規制のメリットとデメリット
1 メリット
- サービスの質向上
適正な競争環境を維持し、事業者の質を一定以上に保つことができる。 - 地域ごとのバランス調整
過剰な供給や地域間の格差を是正し、公平なサービス提供を確保できる。 - 財政の安定化
公費負担の増加を抑制し、持続可能な福祉サービスの提供を実現できる。
2 デメリット
- 新規参入が困難
新たに福祉事業を始めたい事業者や新規出店したい事業者にとって、規制が参入障壁となる。 - 既存事業所の競争力低下
競争が抑制されることで、サービスの質の向上が停滞する可能性がある。 - 地域差の拡大
一部の地域では新規開設が制限されるため、実際にサービスを必要とする人々が十分な支援を受けられないリスクがある。
【ご参考】根拠法令
■障害者総合支援法
(指定障害福祉サービス事業者の指定)
第36条 第29条第一項の指定障害福祉サービス事業者の指定は、主務省令で定めるところにより、障害福祉サービス事 業を行う者の申請により、障害福祉サービスの種類及び障害福祉サービス事業を行う事業所(以下この款において「サービス事業所」という。)ごとに行う。
2 就労継続支援その他の主務省令で定める障害福祉サービス(以下この条及び次条第一項において「特定障害福祉サー ビス」という。)に係る第29条第一項の指定障害福祉サービス事業者の指定は、当該特定障害福祉サービスの量を定めてするものとする。
5 都道府県知事は、特定障害福祉サービスにつき第一項の申請があった場合において、当該都道府県又は当該申請に係るサービス事業所の所在地を含む区域(第89条第二項第二号の規定により都道府県が定める区域をいう。)における当該申請に係る種類ごとの指定障害福祉サービスの量が、同条第一項の規定により当該都道府県が定める都道府県障害福 祉計画において定める当該都道府県若しくは当該区域の当該指定障害福祉サービスの必要な量に既に達しているか、又 は当該申請に係る事業者の指定によってこれを超えることになると認めるとき、その他の当該都道府県障害福祉計画の 達成に支障を生ずるおそれがあると認めるときは、第29条第一項の指定をしないことができる。
■障害者総合支援法施行規則
(法第36条第二項に規定する主務省令で定める障害福祉サービス)
第34条の20 法第36条第二項に規定する主務省令定める障害福祉サービス(第34条の22において「特定障害福祉サービス」という。)は、生活介護、就労継続支援A型及び就労継続支援B型とする。
■児童福祉法
(指定障害児通所支援事業者の指定)
第21条の5の15 第21条の5の3第1項の指定は、内閣府令で定めるところにより、障害児通所支援事業を行う者の申 請により、障害児通所支援の種類及び障害児通所支援事業を行う事業所(以下「障害児通所支援事業所」という。)ごとに行 う。
2 放課後等デイサービスその他の内閣府令で定める障害児通所支援(以下この項及び第5項並びに第21条の5の20第 1項において「特定障害児通所支援」という。)に係る第21条の5の3第1項の指定は、当該特定障害児通所支援の量を定めてするものとする。
(中略)
5 都道府県知事は、特定障害児通所支援につき第一項の申請があった場合において、当該都道府県又は当該申請に係 る障害児通所支援事業所の所在地を含む区域(第33条の22第2項第2号の規定により都道府県が定める区域をいう。) における当該申請に係る種類ごとの指定通所支援の量が、同条第一項の規定により当該都道府県が定める都道府県障害 児福祉計画において定める当該都道府県若しくは当該区域の当該指定通所支援の必要な量に既に達しているか、又は当 該申請に係る事業者の指定によってこれを超えることになると認めるとき、その他の当該都道府県障害児福祉計画の達 成に支障を生ずるおそれがあると認めるときは、第21条の5の3第1項の指定をしないことができる。
■児童福祉法施行規則
(特定障害児通所支援)
第18条の30の2 法第21条の5の15第2項に規定する内閣府令で定める障害児通所支援は、児童発達支援及び放課後等デイサービスとする。