放課後デイにおいて保育士は必要不可欠な存在です。この記事では、放課後デイにおける保育士だけでなく、保育士の現状についても説明しています。放課後デイにおける保育士の活用方法について理解できるとともに、採用などの参考になると思います。
保育士とは、児童福祉法に基づく国家資格(名称独占)で、主に児童福祉施設等で、乳幼児から小学校入学前の児童の保育だけでなく、放課後等デイサービス(小学校〜高校)、放課後児童クラブ(小学校)で、専門的知識及び技術をもって、児童の保育及び児童の保護者に対する保育に関する指導を行うことを業とする専門職です。
※保育士として業務(基準人員等に算定)をするには、業務に就く前までに保育士登録をしておく必要がありますので、放課後デイ等での採用にあたっては必ず登録済みの確認が必要となります。
放課後デイにおける保育士とは
①施設の基準人員として(絶対に必須)定員10名以下の場合
・専任の保育士等で常に2人以上が必要(うち常勤1人以上)
②児童支援員等加配加算の人員として
・基準人員に加えて、保育士等を配置している場合、配置形態及び経験年数に応じて加算される。
【主な要件】
・基準人員に加え、常勤1以上 又は 常勤換算1以上 配置
サービス提供時間帯を通じて事業所で直接支援にあたる
【児童支援員等の定義】保育士、児童指導員、心理指導員、理学療法士等
③専門的支援体制加算の人員として
・基準人員に加えて、保育士資格取得後5年以上の経験がある保育士等を常勤換算1以上で配置している場合に加算されるもの。
④専門的支援実施加算の人員として(②・③の人員でも要件を満たしていれば可能)
・基準人員に加えて、保育士資格取得後5年以上の経験がある保育士等を配置(30分以上)して、専門的な支援を直接実施した場合に加算されるもの。
⑤児童発達支援管理責任者として
・放課後デイの責任者として必ず必要な人員。
・保育士であれば、保育士としての相談支援経験5年以上
+研修(基礎研修・初任者研修)+OJT2年間(特例6ヶ月以上)後に、実践研修修了が必要
・通常で7年(特例で5年半)で取得可能
特例の詳細は→こちら
保育士の状況
保育士登録者数 | 約190万人 |
保育士としての従事者数 | 約70万人(約4割) |
保育士の新規登録者数 | 年6万人 |
うち保育士養成校卒業 | 年3.5万人 |
うち試験合格・免除者 | 年2.5万人 |
保育士非従事者へ | 年3.5万人 |
保育士不足が叫ばれていますが、登録者に対する従事者が少ない(潜在保育士が多い)のが問題点の一つです。保育士資格を持っているけれども保育業界(放デイ含む)で働いていない潜在保育士は約120万人(約4割)。看護師や介護福祉士と比較しても、潜在比率は高い状況です。
保育士の保育業界での働き場所(勤務先)
児童発達支援・放課後等デイサービスで働く保育士は約5万人います。
子ども | 従業員 | 保育士 | |
保育所 | 200万人 | 50万人 | 42万人 |
小規模保育所 | 10万人 | 6万人 | 5万人 |
こども園 | 70万人 | 20万人 | 18万人(保育教諭) |
幼稚園 | 80万人 | 10万人 | ー |
※1・2歳未就園児 | 80万人 | ー | ー |
放課後児童クラブ(学童・児童会館) | 140万人 | 10万人 | 不明 |
児童発達支援・放課後等デイ | 60万人 | 14万人 | 5万人 |
就労継続支援 | 成人50万人 | 10万人 | ー |
保育士の求人倍率(施設が保育士を採用したい状況)
・令和6年1月の保育士の有効求人倍率は3.5倍。全職種平均は1.2倍ですので約3倍の求人倍率。
保育士の求人倍率は月での変動が大きく、1月がピークで6月が底の傾向があります。
6月で比較しても全職種の約2倍の求人倍率があります。
・保育士を採用したくても採用できない状況が依然と続いており深刻な状況です。
・特に、東京都や大阪府などの大都市圏では、有効求人倍率が4倍を超えています。
保育士になるルート
①学校卒業ルート・②試験合格ルートともに、保育士として登録申請して・登録完了してから、保育士として業務する必要があります。
(出所)こども家庭庁HP
①学校(保育士養成校)卒業ルート
保育士養成校には、大学、短期大学、専門学校等があります。
②試験合格ルート
・試験は、学科試験と実技試験の2つがあります。合格率は20〜30%です。
・1発で全科目合格する方もいますが、2回目・3回目で合格する方が大半です。
1年に2回合格までに1年〜2年かかっています。
・学科試験は9科目でマークシートによる択一式です。
・合格ラインは各科目6割以上。合格した科目は3年間有効。
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2022年 | 79,378 | 23,758 | 29.9% |
2021年 | 83,175 | 16,660 | 20.0% |
2020年 | 44,914 | 10,890 | 24.3% |
最終卒業学校 | 割合 |
---|---|
高等学校 | 約15% |
専修学校・短大 | 約25% |
大学 | 約60% |
科目 | 詳細内容 | 具体的な出題内容 |
---|---|---|
教育原理 | 教育の目的、理念、歴史、方法論 | 教育における人間の成長・発達、教育目的と教育課程、教授法、学習理論、教育評価、教育倫理 |
保育原理 | 保育の意義、目的、歴史、方法論 | 保育の理念と目的、乳幼児の発達段階と特性、保育計画の作成と実践、保育環境の整備、保護者との連携 |
子どもの保健 | 乳幼児の健康状態について理解し、適切な保健指導を行うための知識と技術 | 乳幼児の成長・発達と健康、感染症、予防接種、乳幼児の食事と栄養、乳幼児の心身の健康の観察、応急処置 |
子どもの食と栄養 | 乳幼児の食と栄養について理解し、適切な食育を行うための知識と技術 | 乳幼児の成長・発達と食、食育の重要性、乳幼児の食事の献立、乳幼児の食事のマナー、食中毒の予防 |
社会福祉 | 社会福祉に関する法制度や、社会問題への対応方法についての知識と理解 | 社会福祉法、児童福祉法、高齢者福祉法、障害者福祉法、社会福祉の課題と展望 |
社会的養護 | 里親制度、児童養護施設、乳児院など、社会的養護に関する知識と理解 | 社会的養護の理念と歴史、里親制度、児童養護施設、乳児院、虐待を受けた児童への支援 |
子ども家庭福祉 | 子どもと家庭に関する問題について理解し、適切な支援を行うための知識と技術を問いま | 子ども虐待、貧困、不登校、非行、子育て支援 |
保育心理学 | 乳幼児の心身の発達と心理について理解し、適切な保育を行うための知識と技術を問います。 | 乳幼児の認知発達、乳幼児の社会性・情操性発達、乳幼児の遊び、乳幼児の個性、保育における心理療法 |
保育内容 | 乳幼児の年齢や発達段階に合わせた、遊びや活動、生活等の指導方法の理解 | 乳児期の保育、幼児期の保育、遊びの指導、生活指導、環境教育 |
・実技試験は、言語・音楽・造形のうち2科目を選択。学科試験申込時に選択科目を申し込む。
合格ラインは選択2科目それぞれ50点満点のうち6割以上。
科目 | 具体的な課題 | 求められる力 |
---|---|---|
造形表現 | 保育の一場面を絵画で表現する。 試験当日に指定されたテーマに基づき、子どもたちの興味や関心を引き出すような作品を作成する。 ①鉛筆またはシャープペンシル(HB~2B) ②色鉛筆(12~24色程度) | 保育の状況をイメージした造形表現(情景・人物の描写や色使いなど)ができること。 |
音楽表現 | 幼児に歌って聴かせることを想定して、課題曲の両方を弾き歌いする。 令和6年度課題曲 「夕焼け小焼け」「いるかはザンブラコ」 | 保育士として必要な歌、伴奏の技術、リズムなど、総合的に豊かな表現ができること。 |
言語表現 | 指定された絵本を子どもたちの年齢や発達段階に合わせ、分かりやすく、話をする。 令和6年度課題曲 3 歳児に「3分間のお話」を想定し 1~4のお話のうち一つを選択 子どもが集中して聴けるようなお話を行う。 1.「ももたろう」(日本の昔話) 2.「おむすびころりん」(日本の昔話) 3.「3びきのこぶた」(イギリスの昔話) 4.「3びきのやぎのがらがらどん」(ノルウェーの昔話) | 保育士として必要な基本的な声の出し方、表現上の技術、幼児に対する話し方ができること。 |
※地域限定保育士ルート
・国家戦略特別区域の学科試験合格後、実技の研修を修了すれば、「地域限定保育士」として登録できる制度です。3年間は受験した自治体(特区区域内)のみで保育士として働くことができる資格が付与されます。令和5年度までは神奈川県・大阪府・沖縄県・千葉県(成田市)のみでしたが、令和6年度以降に全国展開する方向で進められています。
・ 3年経過すれば、地域制限がなくなり、全国の「保育士」として働くことができます。
保育士としての登録
① 「保育士登録の手引き」の取り寄せ
日本保育協会の登録事務処理センターから手引きの取り寄せ
〒102-0083 東京都千代田区麹町1-6-2 登録事務処理センター
・返信用封筒:1枚 角形2号(A4用紙が折らずに入るサイズ)
・返信用切手貼付
②郵便局にて登録手数料の払込
登録事務処理センターから「保育士登録の手引き」が郵送されてきたら、同封されている専用の払込用紙を持って、郵便局にて登録手数料の払込をします。
登録手数料:4,200円
③ 申請に必要な書類の用意
・保育士登録申請書(「保育士登録の手引き」内の書類)
・振替払込受付証明書
手数料払込用紙の右端の部分を保育士登録申請書の裏面に糊付け。
・保育士となる資格を証明する書類の原本(次のうち、いずれか1つの書類)
(A) 保育士(保母)資格証明書(平成15年11月28日までの資格取得者に交付されていた書類)
(B)指定保育士養成施設卒業証明書(平成15年11月29日以降の資格取得者に交付される書類)
(C) 保育士養成課程修了証明書(平成15年11月29日以降の資格取得者に交付される書類)
指定保育士養成施設を卒業後、科目等履修により保育士養成課程を修了した場合
(D) 保育士試験合格通知書(保育士試験合格者に送付される通知書)
(E) 平成17年度までに交付された以下の書類のうち、連続した3年間で全科目合格していることが確認できるもの。複数枚数での提出。保育士試験一部科目合格証明書 ・保育士試験一部科目合格通知書
・現在の戸籍抄本(戸籍の個人事項証明書)
④申請書類の郵送
- 〒102-0083 東京都千代田区麹町1-6-2登録事務処理センター
- 提出方法 必ず郵便局の窓口で簡易書留郵便で郵送
⑤保育士証の交付
保育士証は、申請先の都道府県による審査・決定を経て、各都道府県の保育士登録簿へ登録された後に交付され、登録事務処理センターから簡易書留郵便で郵送されます。
申請の受け付けから保育士証交付までの期間は、書類の不備や確認を要する事項がない場合で、おおよそ2ヶ月程度です。